映画・ナイト・ビジター/セイラムの完全犯罪は成し遂げられる?

ナイト・ビジター

姉夫婦の殺人罪を被せられ精神病院に収容された男がある晩病院を抜け出す。復讐のための計画は成功したかに見えたが・・・

Amazonより。

監督 ラズロ・ベネディク
主な俳優陣 マックス・フォン・シドー/リヴ・ウルマン/トレヴァー・ハワード
ペール・オスカルソン
公開日 1970年
オススメ度
イギリス
公式サイト  無し

ナイト・ビジターの感想

個人的には、思っていたよりもスリリングと思わなかった作品。

なぜって。。。

観る前から「スリリングだ!」「傑作だ!」と言われているのを知っていたので勝手に色々よりスリリングな妄想をしていて、実際に観たときとのギャップがあったせいだ。

当然、作品としては異色で素晴らしいと思う。

画面から「極寒」である事がヒシヒシと伝わる場面からスタート。

本当に吹雪いていて寒々しい。。。

そんな極寒の冬空の下、主人公の「セイラム」(マックス・フォン・シドー)は半そで、半ズボンだけで一人、「ある目的」を持ってひたすら走る。

不気味さを演出するためのシンプルで奇妙な不協和音の音楽は、ちょっと新鮮だった。

本当に不気味な不協和音。

とにかく淡々としているので、「ナイト・ビジター」を物足りないと感じる人もいるかもしれない。

この映画で意外だと感じたのは、一連の連続殺人事件の担当をしているトレヴァー・ハワード演じる「警部」の判断力。

こういった映画だと、刑事や警部は大抵「脱獄なんてありえない!」というところからスタートするのに、この映画では最初から警部が「何かを感じている」。

そして、その「何かを感じている」という警部がトレヴァー・ハワードの抑制の効いた静かな演技で非常に魅力的な登場人物として描かれていたと思う。

驚くのは「警部」というだけで、名前が無いこと。

それから「あーでもない、こーでもない」と、部下と色々と仮説をたてて推理するというシーンなどがほとんど無いのもこの映画の特徴だと思う。

また、様々な人間が登場して複雑になったり、色んなエピソードが織り交ぜられたりといった事もなく、登場人物も、セリフも、場面転換も多くなく、本当に抑制されたシンプルな映画。

多分、無駄を一切省く事で、余計な事を考えずに集中して「セイラムの企む完全犯罪計画」がどうなるのかを観客に観てもらうためだったのでは?」と想像する。

妹の「エスター」がとても嫌な人間で、「最低な妹だな〜」なんて呟いて観てた。
そのいや〜な雰囲気を見事にリブ・ウルマンが演じきっていると思う。

ペール・オスカルソン扮するエスターの夫、「アントン」が助けを求めてもそれに応じないシーンは「なんなの? このエスター。。。」と。。。

以前、観た「叫びとささやき」という映画でリブ・ウルマンが演じた役も個人的は好きではなく、なんか似た感じがした。
このリブ・ウルマンも上手い女優さん。

私の場合、主人公の「セイラムが完全犯罪を成し遂げる事ができるのか?」 という事よりも、「アントンがはめられませんように」と、アントンに同情しながら観てた(笑)

最後は、「それでしたか!」という意外性あり。

当時としてはその「オチ」は画期的だったのでは?

そして当時は、逆にこの淡々とした流れと抑制されたシンプルな描き方は、異色で相当スリリングだったんだと思う。

ところで、、、ある公式サイトでは「あらすじ」に全てが書いてあり、ダメでしょ!って感じ。。。

既に内容が分かっている「実話」ならまだしも。。。ありえない!

ナイト・ビジターの残念なところ

なんで、最後まで「そのオチ」に気がつかなかったのか、突っ込みたいところ。

でも、そういう事じゃないのよね。。。描きたいのは。。。

それから、セイラムがいる精神病兼刑務所のシーンで、時折セイラムが上を見上げては見えない窓の様子を下から伺うシーンがあるのだけど、風邪がビュービュー入ってきているはずなのに、軽装で寒そうにしていなくて、不自然だったかな。。。

まあ。。。どうでもいい事だけど。

その他いろいろ

◆主人公「セイラム」を演じているマックス・フォン・シドーは、この映画の3年後にあの有名な「エクソシスト」の神父役を演じている。 実は「エクソシスト」はまだ観た事が無い。。。苦手なジャンルだから。。。でも、有名だしいつか観たいと思う。

◆音楽はヘンリー・マンシーニ。あの「シャレード」、「暗くなるまで待って」、「ピンクパンサー」の音楽で有名!

◆セイラムの妹「エスター」を演じたリブ・ウルマンはなんと東京生まれ!ただ生まれてすぐトロントに移ったよう。

※Top画像はIMDb公式サイトより。

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