蜘蛛女のキス | |
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監督 | ヘクトール・バベンコ |
主な俳優陣 | ウィリアム・ハート/ラウル・ジュリア/ソニア・ブラガ |
公開日 | 1986年7月 |
オススメ度 | |
国 | ブラジル・アメリカ |
公式サイト | 無 |
蜘蛛女のキス 感想
是非、観て欲しい映画。
原作はアルゼンチンの作家マヌエル・プイグの小説。脚本はレーナード・シュナイダー。
映画は南米のとある刑務所のシーンから始まる。1つの監獄部屋に2人の囚人。 1人はレジスタンス運動をしている政治犯ヴァレンティン。 もう一人はホモセクシュアルのモリーナ。 風紀を乱しているという罪で囚われていた。
映画好きのモリーナが映画のシーンを得意げにヴァレンティンに語り、彼の心を少しずつ開き、秘密を探ろうとするシーンはとても丁寧に、そして特殊な方法で描かれている。
その「特殊な方法」とは度々、織り交ぜられる「映画内映画」の事で、それはモリーナが語る映画のシーンの事。
ただ、「特殊な方法」と言っても、ドラマや、映画でよく「回想シーン」などで観られる手法と同じで、この映画では「回想」ではなく、それが「映画」になっているというもの。
脚本、演出が素晴らしく、「刑務所」という閉ざされた空間と、その刑務所に収容されているモリーナが語る「映画のストーリー」が複雑に交差しながら物語が展開していき、惹きつけられる。
この映画での「映画内映画」は「モリーナが 描く、独特なストーリー」で、またそのストーリーは実はとても重要なもの。
また何と言ってもモリーナーとヴァレンティンがいる殺風景な刑務所と、「映画内映画」が醸し出す雰囲気とに大きなギャップがあり、そのコントラストが上手く混ざり合って「映画そのもの」を一層引き立てているように感じる。
モリーナとヴァレンティンは徐々にお互い心を許せるようになっていく。特にモリーナはヴァレンティンを愛してしまった。。。
どこの国の話なのかはわからないけれど、多分「アルゼンチン」だと思う。
映画を見終わって思う事は、モリーナが語っていた映画の登場人物の「レニ」、そして「蜘蛛女」は、彼自身だったんだろうという事。
特に「蜘蛛女」こそモリーナだと思う。
何故なら、「蜘蛛女が泣くシーン」をヴァレンティンが「何故泣く?」とモリーナに質問するシーンで、モリーナは戸惑い、言葉に窮すところがあり、この態度とそれまでのストーリーとでモリーナが蜘蛛女では無いか?と。まあ、私の勝手な解釈だけど。
映画の結末はとても切なく、辛かった。。。 でも、モリーナの「あるセリフ」、そして「行動」に移すまでの表情を見ると、「起こる事」を予想し、覚悟していたのでは無いかと思う。覚悟を決めるまでの彼の目が私には印象的だった。
そして、社会が不安定な中で生きる人々の悲喜こもごも。。。
何故、ラストシーンがあのようなシーンなのか・・・。
別に不思議では無かったけれど、最近この映画のDVDを購入し、メイキングで監督が話している内容で納得がいった。これは購入した人しか分からないと思う。
ところで、モリーナ役のウィリアム・ハートの演技が素晴らしい。
大柄でゴツゴツとした雰囲気の彼がこの役?と思ったけれど、彼自身がこの役を切望していたらしい。
特筆すべき点は、衣装であったり、化粧であったりと見た目でホモセクシュアルとすぐ分かるというような演出・演技では無く、内面から女性としてのモリーナを見事に演じている事。
私は彼の切ない表情。。。目の演技が好きだ。
残念なところ
特になし。
その他
- ウィリアム・ハートはこの映画で「1985年 カンヌ映画際 最優秀男優賞受賞」「1986年 アカデミー賞 主演男優賞受賞」「1985年 ナショナル・ボード・オヴ・レビュー 最優秀男優賞」を受賞! すごい快挙だ。映画は当時大絶賛されたらしい。「1985年 東京国際映画祭 審査員特別賞受賞」
- 個人的にはヴァレンティンを演じたラウル・ジュリアも素晴らしかった。 彼の遺作は「アダムス・ファミリー」のフランケンシュタイン役。
- レーナード・シュナイダーと言えば「地獄の黙示録」。まだ観たことが無いのでいつか観ようと思う。